2011年11月29日
秋ドラマが始まる前、個人的に一番期待してたのは『蜜の味』だった。菅野美穂主演にハズレなし。『働きマン』『キイナ』『曲げられない女』など、大ヒットはしなくても確実に楽しませてくれる女優だと思う。ところが今回は…。いや、彼女のせいではないのだが。
考えたら、菅野がイヤな女を演じるのは珍しい。前の『ギルティ』でも悪女だったが、それは無実の罪を着せられた復讐のためで、本当は…という。『蜜の味』では医者役。ARATA、榮倉奈々との三角関係の話で、ただ自分がつき合っているARATAを榮倉に渡さないために大急ぎで結婚を仕切り、しかも2人を心理的攻撃で揺さぶる。
夜中に榮倉のアパートに“脅迫”に出向き、その話を聞いたARATAが諌めると、逆に「彼女の妄想かも。心療内科で診察を勧めたほうが」とか。それがまた、ARATAが本当に妄想かも…と惑う説得力ある話しっぷりで、客観的に観てると余計イヤな感じ。
叔父のARATAに恋心を抱く榮倉を理性に欠けると咎める台詞も「あなたは犬や猫と同じなの?」とか言って、背筋を凍らせる。
話は逸れるが、格闘技マンガ『グラップラー刃牙』に天内悠というキャラがいて。普段はアメリカ大統領のボディガード。大統領が欲することを察知して常に言われる前にやる。そして格闘家として闘技場に立てば、敵が嫌がるえげつない攻撃を徹底的に仕掛ける。
相手が最も求めることをするのが愛なら、相手が最も嫌がることをするのが闘争で、それは表裏一体なのだと。
菅野美穂は演技がうまい。視聴者が最も求めるツボを突く。その裏返しで今回の悪女役だと、視聴者が最も嫌がるように演じる。顔まで底意地悪く見えて。女優として見事だが、見事すぎる悪女ぶりゆえ、観ていて本気で後味が悪くなる。そして伸び悩む『蜜の味』の視聴率。いやホント、菅野美穂は自分の役をまっとうしているだけなのだが。
(終わり)

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