2011年8月22日
村上春樹氏のエッセイ集『村上朝日堂 はいほー!』に「青春と呼ばれる心的状況の終わりについて」という一篇がある。
青春は終わった…と認識した出来事に関する話。
村上氏の場合、ある女性の発したひと言によって、一瞬にして、青春の幕が引かれたという。
エッセイの枕では、彼の旧友が「6歳の息子に嫉妬した自分に青春の終わりを感じた」との話も出ていた。
この子はこれから大きくなって、いろんな女の子と出会って、恋をして、そういうことがいっぱいあるのに、俺にはもうない…と。
では自分の青春が終わったのは? と考えて思い当たったのは、もう30歳も過ぎた夏に、スイスを一人旅したときのことだ。もちろん、それまでずっと“青春だ”と思っていたわけではないが。
そのときは、登山鉄道でグリンデンワルトというアルプスの村に入った。
アイガー北壁など雄大や山々が四方にそびえ立つ中に広がる、のどかな緑の景観が今も忘れられない。
登山鉄道はふもとのインターラーケンという街から出ていて、そこにドイツから列車で向かった。
ふもとでのんびり1泊して、翌日の昼ごろ登山鉄道で…という計画。
ところが、どこでどう間違えたのか、気づくと自分の乗った列車はスイスではなく、オーストリアに入っていた。
(明日へ続く)

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