自粛ムードの中で行われたライブ(4/5) | Deview-デビュー
2011年5月2日

 3月30・31日、震災の影響がいまだ色濃く影を落とす中、考え抜いた末に覚悟を持って決行した坂本真綾のライブ@中野サンプラザ。節電のため機材の電源は電力車から供給。場内の照明も抑えられ、客席に入った途端“暗いな”と感じた。暖房も切られていた。

 華やかなステージセットもナシ。バンドの機材やアンプ類が並ぶだけ。そして本人が登場しても、舞台上の照明すら暗めで、彼女にピンスポットが当たるのみ。普通ならバーンと1曲目を歌って盛り上がるところだが、この日はまず彼女の挨拶から始まった。「いろいろある選択肢の中から、ここに来ることを選んでくれた皆さんに感謝します」と。

 ツアーを再開するに当たり、セットリストを大幅に変えたという。“笑って向き合えるときがいつか来ますように”と歌う「Remedy」などが加えられた。他の曲でも“まぎれもない明日がキミだけを迎えにくる”“いつかまたぬくもりを抱いて歩いてみせる”といった詞が、こんな状況下だけに胸に響いた。気づけば、たくさんの元気と癒しをもらえた。

 MCでも震災にたびたび触れ、「たくさんの方々が亡くなってしまったことを本当に悔しく思う」と声を詰まらせたりも。一方で、「哀悼する気持ちと別に、自分が幸せになることを恐れてはいけないと思う。幸せでない人が他の人にやさしくできないから」「やさしい気持ちを隣りの人に手渡すことが、長い長い支援の中で大事になると思います」とも話していた。

 アーティストとして今だからこそライブをやる決断をしたのは、彼女の10年ほど前の個人的経験にも起因しているそうだ。
(明日へ続く)


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