映画派女優からドラマ派への転身(5/5) | Deview-デビュー
2011年3月14日

 10代の頃、等身大の青春感を醸し出して素晴らしい演技を見せてくれた多部未華子。

だが、それだけでやってたら、女優として行き詰まっていただろう。青春がどんなに素晴らしくても、いつかは終わるのだから。

 映画『君に届け』の黒沼爽子役には“やっぱり多部ちゃんはコレだよな〜”と思ったが、もう彼女も22歳。女子高生役はあれが最後だったかもしれない。

 彼女がすごいのは、そうしたナチュラル青春路線とまるで違う『デカワンコ』のような役も、厭わず取り組むことだ。

鼻をヒン曲げたり、鼻の穴を思い切り広げたりするのはヘン顔に近いが、“やらされてる感”はない。まあ、本人が昔から吉本新喜劇好きだったこともあるのかも。

 女優はどんな役をやるのも当然。のはずだが、実際は「イメージがどうこう」とか言い出すことも少なくない。

事務所が「アイドルではなくて女優なんで」と言っておきながら、ヨゴレっぽい役は一切NGだったり。

 そこ行くと、多部ちゃんは芸人ばりのコメディもやり切る。

『デカワンコ』の一子に関しては「わざとらしくなるのは嫌い。でも、少しオーバーにして強弱をつけてます」と話しているが、あり得ない人物像を劇中でちゃんと成立させて。

 「衣裳を着て、その世界に入ってしまえば、違和感はあまりない」とも。作品の空気を自然に体現するという意味では、青春ものでもコメディでも、彼女の女優としての本質から変わらないのかもしれない。

(終わり)


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