2010年10月7日
90年代前半に起きた渋谷系ブームの中、当の渋谷系アーティストたちは、自分がそう呼ばれるのを快く思っていなかった。
考えたら当然かもしれない。
そもそも渋谷系は、それまでの邦楽に捉われない音楽スタイルが支持されたブーム。
そんな先鋭的な音楽を奏でるアーティストたちが、自分を"オシャレな"とか安易にカテゴライズされたら、抵抗は大きかっただろう。
しかし、アーティストたちの意図を越えたところでリスナーに刺さったのは、より大きなうねりの波だった証明でもある。
時代の針を進めるために求められた音楽、と言っても過言でない。
HMV渋谷店が閉店した今、渋谷系の系譜も一見、途絶えたように見える。
Perfumeのプロデュースで名を馳せた中田ヤスタカのcapsuleなどが"ネオ渋谷系"と呼ばれたこともあったが。
だが、渋谷系とはジャンルではなかった。
ネオアコ、アシッドジャズ、ソフトロック、ヒップホップなど多岐に渡る音楽性が流布されたムーブメント。
それが世に広まることにより、我々リスナーの感度が高められた。
椎名林檎はデビュー当時"新宿系"と自称していたが、彼女の登場が渋谷系以前だったら、表現が先鋭過ぎてカルト的存在に過ぎなかったのでは…という関係者もいる。
だが今、彼女のようなアーティストは、他にもメジャーシーンで普通に受け入れられている。
それこそ渋谷系ブームが残した功績。
そしてCDが売れない今だからこそ、そろそろ次の大波が来てもいい。
(終わり)

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