渋い名作と渋い若手女優(1) | Deview-デビュー
2010年7月15日

 仲代達矢が脚の不自由な老漁師役で主演する映画『春との旅』が、静かに好評を博している。公開時に『ぴあ』の満足度ランキングで1位になったり。

 仲代といえば言わずと知れた名優だが、御年77歳。

日本ではこうした俳優が主役を担う映画は少ない。

ハリウッドでは、近いところだとクリント・イーストウッドの『グラン・トリノ』など結構あるのに。そして、演技者として人間として、年輪を重ねたからこその味わいを醸し出している。

 『春との旅』は、仲代演じる忠男が孫娘・春との暮らしに行き詰まり、老いた自らの受け入れ先を求めて、疎遠になっていた親類を2人で訪ね歩く話。

派手な映画ではないが、偏屈な忠男と兄弟たちの葛藤に、胸に染み入るような切なさと優しさが感じられた。

 ちなみに、こうした老優モノの邦画の名作では、奥田瑛二監督で故・緒形拳が主演し、モントリオール映画祭で3冠を受賞した『長い散歩』を思い出す。

こちらも、緒形演じる元高校の校長が、虐待を受けていた幼女と旅するストーリーだった。

 そして、『春との旅』で仲代と旅する春を演じたのは徳永えり。これまた派手な女優ではないが、いい演技を見せてくれた。
(明日へ続く)


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