失われたアイドル歌唱法(4/5) | Deview-デビュー
2010年4月1日

 AKB48の宮崎美穂が2月に出した1st写真集には"昭和を漂わす不思議なオーラ"との宣伝文句が付いていた。

本人にその点を聞くと「よく大人の方に、菊池桃子さんに似てると言われるからかな?」と話していた。

 男の子なら誰でも目が釘付けになるほど、愛くるしかった桃子(今も衰えてない)。その歌といえば、原田知世以上のささやき唱法。声量に乏しく、ポツリ、ポツリと言葉を紡ぐような頼りなさ。でも、それがアイドル歌手としての彼女の魅力を際立たせていた。

 デビュー曲「青春のいじわる」は特に泣ける。

純粋なゆえに傷ついて"一緒に歩いた陽ざしのまぶしさ"だけを思い出に別れていく2人…。切ない痛みは、確かな音程で声量豊かに歌い上げられても伝わらない。彼女のはかない歌声だからこそ胸が震えた。10代の少女にしか表現できない世界。

 今のアイドルにも良い歌はたくさんある。単純な歌唱力のレベルは確実に上がっている。だが、原田知世や菊池桃子のように"青春の一瞬"の輝きや切なさを感じるものは少ない。

良きにつけ悪しきにつけ、ガールポップのアーティストが歌っても同じ感じというか。

 そういう意味での真性アイドル歌手がいなくなった要因は、カラオケとSPEEDだろう。
(明日へ続く)


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