役の過ごした時間を表現できる女優(2/5) | Deview-デビュー
2010年3月15日

 『曲げられない女』で菅野美穂が演じているのは、弁護士を目指すも司法試験に9年続けて落ちている女性。

それでも合格を諦めず、プロポーズを受けた恋人と別れ、バイト先の法律事務所は弱者に味方しない姿勢に憤って辞めて、唯一の肉親だった母親が亡くなっても、黙々と勉強を続けている。

 融通の利かない堅物だが、毎回押し殺していた感情を爆発させる場面が定番だ。

「私だって本当はしんどいわよ! でも、不安や寂しさに負けないのが生きるってことじゃないの!?」「私だってお金は欲しいわよ! お腹いっぱい食べたいわよ! でも、自分を殺すって"自殺"って書くのよ!」

 ……泣ける。染みる。

自分もやり甲斐なんかを求めて転職するたびに給料が下がり、挙句に給料もらえないフリーになった身だけに…なんてカッコイイものでもないですが。

 そんな個人的なことは実は関係なくて、菅野の演技にそれだけ観る者の心を動かす力があるという話。

こうした定番でタンカを切る場面は『ショムニ!』や『ごくせん』などでもあったが、この『曲げられない女』ほど胸が震えるものはない。

 菅野美穂が女優として凄いのは、演じる役の過ごしてきた時間をまとえることだと思う。
(明日へ続く)


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