お客さんの前で歌うことで、
表現者とはどういうことかが理解できると思います
――Q.『ミセルバプロジェクト』を立ち上げたきっかけは?
「僕は元々歌い手で、30歳を過ぎてからはボイストレーナーやコーラス、作曲もするようになり、音楽に関わる様々なことをやらせてもらえるようになったんです。それらを一つにすれば、新人をライブに出演させて、成長過程をお手伝いする仕事ができるなと思って、2年前にミセルバを立ち上げたんです」
――Q.ミセルバプロジェクトではライブステージでの育成を重視していますね。
「『ミセルバ』という言葉には“自分を見せる場”と“ME SELL BA=自分を売り込む場”という意味を掛けてあるんです。僕たちが言葉で説明するのではなくて、ステージに立って、自分で気付いてほしいこともたくさんある。自分に足りないものに気付いてもらったところで、初めて僕らのアドバイスに聴く耳を持ってもらえたり、ちゃんと響くようになるんです。」
――Q.それは歌手、そしてボイストレーナーとしての経験から感じたことですか?
「僕自身もそうでしたし、現場で肌で感じています。やっぱりお客さんの前で歌わないと何も感じられないし、発表会になっちゃうんですよね。“歌が上手になりました”って見せても、中身が伝わるような歌を歌わないとお客さんに響かないんです」
――Q.個人で毎週『見せる場所』を作るのは簡単ではないですよね。
「ツイッターやブログなどのSNSを使って自分を広める作業についてのセミナーやアドバイスも行なっています。そういうことをまめにやれば集客も増えるし、集客が増えるということは単純にファンが増えるということなので。そうやって出来たファンはなかなか離れないですから」
――Q.歌手志望の人が初めてライブをするのはハードルが高いのでは?
「ライブ活動の実績のあるボーカリストもいますが、まったくの“素人さん”もいらっしゃって、そこから始めるのがウチのプロジェクトだと思います。リスナーの支持によるポイントでライブの時間帯が分かれていて、頑張ったら後半に上がれるようになっています。オーディションを受けたことがないけど、ちょっと歌ってみたいという人に出会う可能性を開いていて、“歌ってみたらスゴイじゃん!”っていう人を発掘できるかも知れない。そうやって参加した人たちも、後半の人たちのパフォーマンスを最後まで見れば“このままじゃダメだな”っていうことに気付けると思います」
――Q.ライブでレベルアップすることで、オリジナルの楽曲やミュージックビデオの制作という特典が得られるのも特徴です。
「頑張っている人には、世に出る作品を作ってあげたいと言うのが僕らの方針。曲を書かない人にはポイントをクリアした段階でオリジナルの楽曲を提供しています。歌詞は自分たちで書くようにトライさせるんですけど、オリジナル曲が持てるとモチベーションも上がりますし、オリジナルでは歌い方の見本がなくなるので、自分がどう歌って、何を伝えればいいのか、気付くことができると思っています」
――Q.『ミセルバ』のシステムは、歌い手であるご自身の願望から発想したんですか?
「ほとんどがそうです。自分が駆け出しの時代にこんなものがあったら参加してるよ!と(笑)。システムを含めて表現者に優しいというか、そこは誠実にやっているつもりです。」
――Q.ここに参加しているボーカリストたちにどんな変化を感じていますか?
「すごく歌が上手でも、最初は伸び悩んで、投票に現れなかったりするんです。そこで、フェイクだスキルだじゃなく、もっとまっすぐに中身をお客さんに届けようということをアドバイスすると、自己満足の場ではなくなって、いきなり投票が伸びたりします。それは顕著ですね。」
――Q.ポニーキャニオンとのタッグでデビューの出口も出来ました。これからどんな人に応募して来てほしいですか?
「『ミセルバ』はノンジャンルなので、“こんな曲を歌いたい”“こんなサウンド・ジャンルをやりたい”というのをブレずにやり続けて欲しいです。我々はそこに対して良い・悪いは判断しません。自分の個性が出るような音楽をちゃんと表現してほしいですから。ステージに立ったとき、その人の中身や性格がわかるような曲を歌ってほしいし、それがちゃんと出せていれば、僕らは好みに関わらず良いと判断するだろうと思います。」
――Q.チャレンジすることで得られることがたくさんありそうです。
「構える必要はありません。ステージに立てばどんな人でもビビるんで(笑)。緊張感を持って生きられるかというのはすごく大事なことです。ステージに上がるというのは『上からモノをいう仕事』じゃないですか? それだけの人間でいられるかが問われるし、そこまでの努力をしていないと思えば思うほど、ステージは高いものになる。ただし、そんな気概で生きていれば、すぐ隣にステージがあると思うし。緊張感に包まれた生活をしていれば、自然とそういう目つきや顔つきになれると思うんです」
PROFILE
前ビクターエンタテインメントより2005年『STY〜僕の憂鬱〜』でデビュー。
関ジャニ∞『雪をください』『This moment』(作詞・作曲)
関ジャニ∞村上信吾ソロ曲『Dear…』(作詞・作曲・コーラス・コーラスアレンジ)
FLOWER『Fadeless Love』(作曲)
嵐『15th Moon』、AAA『出逢いのチカラ』
鈴木 雅之『Spy』(コーラス)多数手がける。