2015年『仮面ライダーゴースト』(テレビ朝日)のアラン/仮面ライダーネクロム役で注目を集め、現在、NHK 連続テレビ小説『ひよっこ』で、有村架純演じるヒロイン・谷田部みね子を優しく支える先輩・前田秀俊(ヒデ)を演じ、人気急上昇中の磯村勇斗。中学のときに役者の道を目指してから、憧れの朝ドラ出演に至るまでの日々を振り返ってもらった。
「目指すからには、中途半端に終わりたくないし、絶対に成功してやる!と思っていた」
――磯村くんが芸能界に興味を持ったきっかけは、中学のときに自主制作した映画がきっかけだったんですよね。
「そうですね。15分くらいの作品でしたが、脚本もカメラ、主演も自分でやって。それを学校で上映したときに、たくさんの拍手をもらって、演じていて面白いうえに、評価してもらえて嬉しかったんですよね。それで、この楽しさをより感じるには、役者になるしかない!と思いました」
――中学の頃に描いた夢を、一度もブレずにずっと抱き続けてきた、その原動力って何だったんですか?
「なんだろうな……。人にチヤホヤされたり、有名になりたいという願望が、密かに自分の中にあって、芸能界ってどんな世界なのか見てみたいっていう好奇心もあったし、ずっと憧れを抱いていて。人を喜ばせることも好きだったし、中学の頃から、この道しか見てなかったので、自分の中でほかの選択肢がなかったというか、役者の仕事以外、ほかの仕事にまったく興味がなかったんです。目指すからには、中途半端に終わりたくないし、絶対に成功してやる!と思っていたし、そういう強い想いがあったから、ずっとブレずにやってこられたのかなとは思います」
――高校生の頃、芝居を学ぶために地元の劇団に入って、舞台に立ったことも大きかったのでは?
「そうですね。そこでお芝居というものに触れて、お客さんの前で演じるということを経験できたので、たぶん、その瞬間にさらに芝居への熱い想いに火がついたような感じだったんだと思います。高校時代に舞台に立ったことは、自分の中ではすごく大きな経験でした」
――その後、上京して大学に通うわけですが。
「2年のときに退学してしまいました。もともと大学には進学せずに、プロダクションや劇団に入ろうとしていたけど、両親に猛反対されて。最終的には“演技ができる大学に行く”ということで落ち着いたんですが、大学に通っている中で、4年間も大学にいたら、自分の熱意がどんどん失われていく気がしたし、“もっと外の世界を観たい”“いろんなものを吸収したい”“一刻も早くプロとしてやっている方と一緒に演じたい”という気持ちでいっぱいになり、結局、中退しました。今思えば、そのことが一番大きな一歩かもしれません」
――大学生という、ある意味“保険”を捨てて、自ら逃げ場をなくして役者一本を目指すというのは、生半可な気持ちではできませんよね。
「もともと、親に言われたから進学を選んだけど、やっぱり役者になるという想いのほうが強かったんですよね。その後、アルバイトして生活費を稼ぎながら、オーディション受けたり、舞台に出たりしていて。そんな中で、自分より若い役者さんや同世代の役者さんが映画やドラマなどに出ているのを見ていて、“この差って、なんなんだろう?”と、すごく疑問に思っていました。努力すれば間違いなく成功するという世界でもなさそうだし、急にブレイクすることもあるっていうのは分かっていたので、どうしたら成功するんだろう?って、悶々としつつも“最後に勝つのは努力した人なんじゃないか?”と信じて、コツコツと努力していました」
――その頃は、どんな日々を過ごしていたんですか?
「小劇場でいろんな芝居をやっていくなかで、同じ夢を抱いているメンバーもたくさんいて、“どうやったら売れるか?”というような話をしたりしていました。でも、支えあって励まし合う仲ではあるけど、心の中では“絶対に負けたくない”という気持ちは持っていて。舞台の稽古を通して、作品づくりはチームワークが大事で決して一人ではできないということも学んだし、お金をいただいて作品を観てもらうという責任感という部分も学ぶことができました。アルバイトに関しても、今やっている『ひよっこ』に関していえば、料理場で働いていたことが役に立っていますし、そういう経験も役づくりに活かされているなって思います」
――自分の夢を周りに話して、同じ夢を持つ仲間を見つけることも夢に近づくのに大切なことなのかもしれませんね。
「僕はけっこう周りに自分の夢を言ってきたタイプですね。そうすると、いろんな人が支えてくれたり、そういう情報を持ってきてくれたりするんですよね。同じ夢を抱いている人にも出会えるし、自分も負けてられないという想いになって、お互い切磋琢磨できる。恥ずかしがって黙っているより、堂々と夢を話していったほうが、その道が広がっていくのかなって思います」
――舞台のオーディション以外にも事務所所属のオーディションもけっこう受けたりしていたんですか?
「大学の友達と、“誰が一番最初に引っかかるか?”みたいな感じで、写真を撮り合ったりして書類書いて、何回か事務所にオーディション履歴書を送っていました。でも、僕を含め、まあ、誰一人引っかからなくて(笑)。事務所にも書類で落とされて、大きな舞台に立ちたくても、ドラマや映画に出たくてもオーディションで落とされるしっていう感じで、その壁を壊したかったけど、壊す術がなくて。そのころは、大学の友人やその御縁で知り合った演出家さんに声をかけてもらって、オーディションを受けて、たくさんの舞台に立たせていただきました」
――舞台に出演していたことがきっかけで、事務所に所属することにつながったわけですよね。
「そうですね。そういう活動を続けていた中で、出演していた舞台を観た今の事務所の方に声をかけていただいたんです。一つ一つ、目の前のことに対して頑張ることが大事なんだなって、改めて思いました」
――その後、『仮面ライダーゴースト』でアラン/仮面ライダーネクロム役を演じ注目を集め、現在は、連続テレビ小説『ひよっこ』で見習いコック・前田秀俊役で出演。注目作が続いていますが、朝ドラに関しては、思い入れが強かったとか?
「役者を目指していたけど、上手く進めなくて葛藤していたときに、朝ドラで活躍している自分と同世代の役者さんたちの活躍を観て、すごいなと思ったけど、同時に悔しいという思いが強くて。『仮面ライダー』もそうでしたけど、ただ憧れの場所というのではなく、“絶対自分もその場所に立ちたい!”という想いがありました。それと、朝ドラに関しては、僕が小さい頃から両親がずっと見ていた作品でもありましたし、そういう歴史ある作品に携わりたいなという気持ちもありました」
――これまでも朝ドラのオーディションは受けていた?
「3回くらい受けています。2回目に受けた『まれ』のときに、1シーンだけ出させてもらえたんです。そこで初めて朝ドラの現場に携わらせていただきましたが、1シーンだけの出演ということで“ここだけで終わりたくない”という想いはさらに強くなりました」
――では、『ひよっこ』の出演が決まったときは、感慨深かったでしょうね。
「そうですね。言葉が出てこないくらい、一瞬時間が止まりました。事務所の会議室に呼ばれて、『ちょっと話があるから』と、マネージャーさんが暗い感じで言ってきたので、“うわ〜、なんだろう。嫌だな”って思っていたら、『実は受かったんだよ』と聞いて。最初は信じられなかったんですが、恐怖心と喜びが入り混じった感じでした」
――最初は役者への道を反対されていたご両親も喜んだのでは?
「出演が決まったことを、一番最初に家族にテレビ電話で伝えたんですが、母も最初は信じてくれませんでした(笑)。『だって、オーディション受けるとか、何も言ってなかったじゃん!』、『そんなん受かるわけないでしょ』って。なんとか信じてもらったあとは、『キャーッ!』って叫んだりして、すごい喜んでくれていました。今もけっこう電話する機会もあるので、『今日のここのシーン良かったね』とか、『あのシーンは微妙だった』とかダメ出しもくれるし、親戚とか近所の方も見てくれているみたいで、そういう報告をしてくれています」
――撮影も佳境に入ってきたとは思いますが、ついにみね子とヒデの恋愛も大きく動き出しましたね。台本をもらうごとに、ヒデの役柄やみね子への想いが判明していったということですが。
「そうなんです。最初はみね子とそういう関係になるっていうのはわからなくて、台本をもらうごとに知っていったという感じでした」
――島谷(竹内涼真)が出現したあたりから、ヒデの中で心境の変化があったのかな?と。
「そうですね。その頃からみね子に対して、好意を持って演じるようにはしました。でも、それが100%好きというのを伝えるのではなく、徐々にそのパーセンテージを上げていくという感じでした。少しずつ視線を送るようになったり、もっと気遣ってあげたりっていうのは、少し気をつけて演じていました。自分の中では、島谷と(峯田和伸演じるみね子の叔父の)宗男さんと3人で、島谷がみね子のことを好きなんじゃないか?っていうシーンのときあたりに、台本を読んでいて、“あ、ヒデはやっと自分の気持ちに気付くんだ”っていうのを察して、そのあたりから意識的にそういう風に演じるようになりました」
――今後のみね子とヒデの恋愛模様にも注目ですね。
「そうですね。ヒデが佐賀にいる島谷に会いに行って、島谷に『みね子のことが好きだ』と伝えて、けじめをつけて、そこからヒデの本格的な恋が始まっていきます。みね子に対する想いも強くなっていくし、もっと距離が近くなっていくので、今後のヒデの動きには注目してもらいたいなって思います」
――みね子を演じる、有村架純さんは女優としてどんな印象を持っていますか?
「すごい女優さんだなって思います。主演ということで、一番大変なはずなのに、共演者やスタッフさんを気遣っている姿を見ていて、心も素敵だなって思います。生半可な気持ちでやっていないというか、女優魂みたいなものを現場ですごく感じますね。お芝居の考え方もそうですけど、立ち振る舞いとか、謙虚なんですけど、女優としてのパワーはすごいものを持っているなって」
――役者の先輩ではあるけど、役では逆の立場で、磯村くん演じるヒデは先輩という立場で引っ張っていかないといけない役ですよね。
「今回そこが一番苦戦しました。自分がデビューする前から活躍されている女優さんでしたし、最初はどういう風に接したらいいのかわからなくて。ヒデとしては、みね子の先輩として引っ張っていかないといけないので、そこは磯村勇斗と前田秀俊との間で葛藤みたいなものがあって、最初はてこずりました。でも、時間が経つにつれて徐々に、現場で有村さんとの会話も増えたし、それと同時に距離も近くなっていって、壁がなくなっていきました」
――「すずふり亭」のみなさんも先輩ばかりですが、とても仲が良さそうなのが画面を通しても伝わってきます。
「みんな本当に仲がいいですね。宮本(信子)さんや(佐々木)蔵之介さんをはじめ、みなさん大先輩なんですが、本当に家族みたいな感じで。他愛もない会話をしてみんなで笑ったり、お芝居のことを教えてくださったり、すごく楽しい現場です」
――勉強になることも多いのでは?
「すごく勉強になります。朝ドラはリハーサルをやるんですが、リハの段階で、この役はこのシーンだったらこういう風に動くとか、こういう想いだっていうのを、しっかりと考えて自然にお芝居されるんですよね。自分はまだまだ一つのことしか考えられなかったりするんですが、みなさん観ている視点がもっと広くて、いろんな立場から物事を捉えていらっしゃるんです。自分ももっと細かいところまで考えて芝居しないといけないなと感じました」
――『ひよっこ』のほか、11月には人気コミックを実写化した映画『覆面系ノイズ』も控える磯村くん。様々な役柄を演じていますが、役者という仕事の魅力はどんなところで感じていますか?
「飽きないことかな。毎日、毎回、やっていることが違いますし、同じシーンを何回撮っても毎回ちょっとニュアンスが違ったりするし、そこが楽しいなって思います。あとは、いろんな人と出会えて、そういう人たちとともに一緒に一つの作品を作っていくというのがすごく楽しいです。もともと、創作することがすごく好きなので、その雰囲気はいいなって毎回思います」
――そして、そんな磯村くんが所属する、BLUE LABELがオーディションを開催ということで、事務所のこともお聞きしたいのですが。
「まだできたばかりの事務所ですけど、その分、役者とマネージャーさんの距離が近くて、一人一人ちゃんと見てくださいますし、これからの事務所なので、お互い“みんなで一緒に跳ね上がろう! 一緒に大きくしていこう”という熱い想いがあるなって感じます。そういう勢いみたいなものは感じますし、飛躍していっている最中の面白さがあると思います」
――テレビ番組、映画、舞台などを手がける制作会社「メディアミックス・ジャパン(略称:MMJ)」に設立されたマネジメントセクションという部分も強みなのかなと思います。
「そうですね。制作会社が母体としてあるので、制作側からの意見をすごくもらえるんです。プロデューサーさんからの見え方とか、監督からの意見とか、事務所でお会いしたときや、ご飯に行く機会があるときに、いろんな意見をくださるので、幅広い視野で物事を考えられるようになります。それは、うちの事務所ならではの強みだと思います」
――今回のオーディションも、実際にドラマや映画などの作品を手がけていらっしゃる方によるワークショップが実施されます。磯村くんも受けたりしていた?
「『仮面ライダーゴースト』をやる前くらいまでは、僕もワークショップを受けていました。MMJのワークショップは、実際に現場で作品づくりをされている現役の監督さんがやってくださるので、わりと現場に近いことが学べるんですよね。即興性や瞬発力、柔軟性が鍛えられるし、現場に近い感覚で芝居ができると思います」
――確かに、過去のオーディションを振り返っても、経験者・未経験者関係なく、お芝居をがっつりやるワークショップという印象があります。
「第一線で活躍されている監督の方がワークショップをやってらっしゃるので、現場で対応できる芝居を学ぶことができると思います。ワークショップを受けるというよりも、“いち役者として現場に立っているんだ、ここが現場なんだ”という想いで受けたほうが、いろんなものを吸収できるかもしれません」
――これまでたくさんのオーディションを受けてきた磯村くんが思う、オーディションで大切なことってどんなことだと思いますか?
「オーディションって本当にわからないんですよね。“あ、コレはいけたかな?”っていう好印象のオーディションでも、不合格だったり、逆に失敗したなって思っていたオーディションが意外と通ったりすることもある。でも、いい子ぶったりせずに、そのままの自分を見せることが大事なのかなとは思います。僕も、最初の頃は緊張してしまって、いい子ぶる方向にいっちゃっていたけど、ぜんぜんダメだったので、力を抜いて、オーディションを楽しむという方向に考えるようにしました」
――夢を叶えるために必要不可欠なこととは?
「“絶対、どうにかしてその場所に立ってやる! 成し遂げてやる!!”という野心、強い意思はあったほうがいいと思います。“この役者さんには負けたくない”、“ここには埋もれたくない”、“オンリーワンにならないと意味がない”とか、負けず嫌いな気持ちも大切だと思います。憧れだけではなく、悔しいと思わないと絶対上には行けないと思うんです。その瞬間の自分に満足せずに、“常に挑戦”という想いでいることかなと思います」
――では、最後にオーディションを受けようと思っている読者に、メッセージをお願いします。
「オーディションのこととかって、すごく考えたり、悩んだりすると思うんですが、考えることを1回捨てて、思い切って受けるという行動力って大事だと思います。僕もみなさんと同じように、事務所どうしようかな?って、すごく考えて迷っていた時期がありました。でも、受けてみないと何も始まらない。受けてダメだったら、次に進めばいいし、受かったら喜べばいいし、考えるのは辞めてまずはやってみよう!と切り換えて受けていました。なので、迷っているのなら、その一歩をぜひ踏み出して行動してみてください!」
カメラマン/宮坂浩美
磯村勇斗(いそむら・はやと)●1992年9月11日生まれ、静岡県出身。BLUE LABEL所属。2014年にドラマ『事件救命医2〜IMATの奇跡〜』(テレビ朝日)で本格デビュー。2015年『仮面ライダーゴースト』(テレビ朝日)で、アラン/仮面ライダーネクロムを演じ注目を集める。現在、NHK 連続テレビ小説『ひよっこ』で見習いコック・前田秀俊役で出演するほか、プレイステーション『New みんなのGOLF』のTV-CMに出演中。11月25日には、出演映画『覆面系ノイズ』への公開が控える。
BLUE LABEL AUDITION 2017
- 連続テレビ小説『ひよっこ』に出演中の磯村勇斗や、本オーディションにてグランプリを受賞し女優として活躍中の小槙まこが在籍するBLUE LABELが、デビューと共同でワークショップを開催!
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