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2021/10/11 19:01
オーディションでジュリエット役に抜擢、初の女性役を演じる阿久津仁愛「新しい自分に出会える作品だと感じている」
ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 越前リョーマ役をはじめ、舞台「鬼滅の刃」其ノ弍 絆 累役など、活躍が目覚ましい若手俳優・阿久津仁愛。10月15日開幕の『野外劇 ロミオとジュリエット イン プレイハウス』では、フルキャストオーディションを経てジュリエット役に抜擢され、初の女性役に挑む。ロミオを筆頭にモンタギュー家の配役を女性が、ジュリエット以下キャピュレット家の配役を男性が演じる本作について、作品の見どころやジュリエット役への意気込み、オーディションで心掛けたことなどを聞いた。
【阿久津仁愛 インタビュー】
■「『ロミオとジュリエット』に関しては、自分もいつかはやってみたいなという想いはあった」
――まずは出演が決まった際の思いをお聞かせください。
【阿久津仁愛】「率直に嬉しかったです。オーディションを受けたときは、今回ジュリエット役ということで、初めての女性役だったので、“大丈夫かな、自分にできるかな?”という不安な思いもあって。でも、出演が決まったと聞いて、すごく嬉しかったことを覚えています」
――オーディションにあたり準備したことや、心掛けていたことは何かありますか?
【阿久津仁愛】「ロミオとジュリエットの性別が入れ替わることだったり、これまでの『ロミオとジュリエット』にはないような設定だったりがあって、おもしろそうだなって思っていたので、オーディションも楽しんで受けたいなと思っていて。初めての女性役ということで、自分の中でも新しい表現とかいろいろと研究していきたいなというのはオーディション前に思っていました。オーディションのときは、原作のままの台本だったので、シェイクスピア作品ならではの、難しいセリフ回しとかもあったりしましたが、自分なりに解釈しながらやれたのかなと思います」
――シェイクスピア作品や『ロミオとジュリエット』という作品については、どのようなイメージをお持ちでしたか?
【阿久津仁愛】「『ロミオとジュリエット』に関しては、今回の野外劇が決まる前から観劇したことのある演目でしたし、自分もいつかはやってみたいなという想いはありました。実際に稽古が始まってみて、台本を読んでみると、ストーリーの結末を予言するかのような発言があったり、シェイクスピア作品の独特なセリフや言い回しなどに、実際に触れることができて、すごく面白いなと思いました。だいぶ昔に作られた作品・物語ですが、時代が変わった今もなおずっと受け継がれて上演され続けていて、現代の人たちでも楽しめる物語というのがとても魅力的だなと思います。今回の『野外劇 ロミオとジュリエット イン プレイハウス』は、“近未来の池袋”という新たな設定もあったりするので、そういうところをどう表現してみせたら面白くなるのか…というのを毎日考えながら稽古に臨んでいます」
――今作ならではの見どころは?
【阿久津仁愛】「全部が見どころです! 今は稽古で台本通りにお芝居の掛け合いを重点的にやっているのですが、これからどんどん変わっていくと思いますし、自分が演じるジュリエットのキャラクターに関しても、表現の仕方など、稽古が進むにつれてもっともっと変化していくと思うので、自分でも全部が楽しみです! 僕が個人的に好きなのは、ジュリエットと乳母のシーン。ジュリエットは、大人数で芝居をするシーンがあまりないので、乳母との掛け合いのシーンがやっていてすごく楽しいんです。それと、ロミオとのシーンもぜひ注目してもらいたいです。僕もロミオ役の川原琴響ちゃんも若いので、そのフレッシュさみたいなものは見せられたらいいなと。どう表現したら観ている人がドキドキ・キュンキュンするかなということを常に考えながらお芝居していますし、ロミオとジュリエットの2人のシーンも面白いと思います」
――今回、初めての女性役ですが、難しいなと感じていることどんなところでしょう。
【阿久津仁愛】「稽古中はスカートを履いてお芝居しているのですが、歩き方とかはまだまだ自分だな、と感じていて。これから稽古が進むにつれて、ちょっとずつ芝居の中でも余裕が出てくると思うので、歩き方や立ち方、居方など細かい部分を研究していかないとなって思っています」
――ジュリエットという人物に対しては、どのようなキャラクターだととらえていますか。
【阿久津仁愛】「14歳になるくらいの年齢で、お嬢様として育てられているので上品なところもあるけど、好奇心が旺盛で子どもっぽい部分もありつつ、いろんなことに対して興味がある子なのかなと。今の時代だったら、その年で“結婚”と言われてもあまり想像がつかないと思うのですが、そういうことに対してもすごく興味があって、そこが可愛い部分だなとは思います。ただ、ロミオと出会って恋に落ちてからの展開や考え方が極端なところとかは、現代にはあまりいないようなキャラクターなので、最初のころあまり共感できなくて…。今のようにインターネットとかがない時代だからこそ、自分の中だけでいろいろと完結させようとしたり、内にため込んでその想いが爆発しちゃったりするのかなっていうのを、お芝居を通していろいろと気づくことがあります」
――演出の青木豪さんとは今回が初めてとなりますが、稽古を通してどんなことを感じていますか。
【阿久津仁愛】「今は相手のセリフに対して受け取って芝居をしたり、会話のラリー的なところを重視して稽古をしているのですが、お客さんに見せるためにはもっと表現の幅を広げたり、ここからもっとブラッシュアップしていかないとな、と思っています。毎日、豪さんにつけていただいた動きや、そこに行くまでの気持ちなどを頑張ってくみ取って、考えながら芝居をしているので、頭をたくさん使う稽古場だなと。稽古が終わると頭がパンクしちゃうというか、家に帰ったら何もできなくなるくらい、けっこう集中してやれているのかなと思います。稽古場では失敗もたくさんしてるし、果敢にチャレンジはできていると感じていて。今までの自分にはあまりなかったことなので、稽古していてすごく楽しいです」
■「みなさんのお芝居を見て、吸収できることは吸収していきたい」
――フルキャストオーディションで選ばれた14名が出演する本作。初共演の方が多いと思いますが、カンパニーの雰囲気はいかがですか?
【阿久津仁愛】「本当に長い時間稽古場にいるので、日に日に絆は深まっていると思います。稽古が始まると、みんなバッとスイッチを入れて芝居ができている空間がすごく楽しいし、それがとても心地が良くて。僕は疲れが溜まってくると、集中力が切れがちなのですが、そういう風にみなさんのスイッチが入る瞬間があると、自分もスッとその世界に入れる。みなさんには本当に助けていただいているなって感じていますし、本当に勉強させていただける空間だなと感じています。これからもっとみなさん一人一人のお芝居を見て、吸収できることは吸収していきたいです」
――今作のように初共演の方が多い現場など、新しい環境にはすんなり馴染めるタイプですか?
【阿久津仁愛】「僕はけっこう人見知りタイプです。なので、お芝居に関しても最初から思いっきり出すことがなかなかできなくて…。でも、自分が思っていることはきちんと伝えたいので、そういうところはしっかり考えたり発言したりするように心がけています。ただ、稽古場で同じ空間にいれば少しずつでも絆は深まっていくものなので、そういう部分での心配はあまりないです。コミュニケーションに関してはあまり得意ではないですが、その分、お芝居でどう相手を引き出せるかということを考えたり、台本があれば何でもできるので、その中で自分が表現したいこととか想いを伝えていければいいなと思ってやっています」
――ロミオ役の川原さんとのコンビネーションはいかがでしょう?
【阿久津仁愛】「琴響ちゃん(川原)は事務所が同じなので、昔からレッスンとかを一緒に受けていたりもしていたので、人見知りすることもなくやれています。琴響ちゃんは年下なので、“僕がしっかりしないと!”と思いつつも、『ここ、こうじゃないかな』って気づいたことを教えてくれたりすることもあって、尊敬する部分もあるし、一緒に高めあっていけているのかなと思います」
――お二人で相談されたりもしているんですか?
【阿久津仁愛】「そうですね。稽古の合間とかに、セリフの言い方などもそうですが、『このシーンでは、こういうことができるね』ってお互い稽古で発見したら言うようにしています。ロミオとジュリエットの2人だけのシーンって、物語全体を見ると意外と少ないんですよね。出会ってから数日間しかない中での急展開なので、少しでもロミオとジュリエットの2人シーンでの気持ちを高めていければいいなと思っています」
――ちなみに、ジュリエットと同じ年代の頃、阿久津さんはどんな少年でしたか?
【阿久津仁愛】「中1、中2くらいの頃ですよね…。身長も今よりも低かったし、周りからはけっこう可愛がってもらったりしていたと思うんですけど、ふざけることが好きな中学生でした(笑)。体育祭とか学校の行事があるときに、その準備で友達とふざけていて、先生にめっちゃ怒られたりとか、当時を振り返ると、怒られている思い出ばかり浮かびます(笑)。1人で怒られるのは嫌だけど、みんなで怒られたことって、後々笑い話になるというか、そういうことが、自分の中では青春でした。13〜14歳の頃が一番ふざけていたタイミング。15歳になって、成績ヤバイ!と思い始めて、真面目になっていきました」
――ロミオと出会ったことでジュリエットの人生は大きく変わっていきますが、阿久津さんも同じくらいのときに芸能界入りされて、人生が激変したのでは?
【阿久津仁愛】「中2のときに『ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』を受けて、それをきっかけに事務所に入りましたが、正直そのときは自分の中で何も変わらなかったです。事務所に所属して1年間くらいはレッスンやオーディションを受ける日々で、オーディションもたくさん受けていたけど、なかなか仕事につながらなかったし、お仕事をいただけるようになってから変わっていったんだと思います」
――仕事を通じて、意識も変わっていった?
【阿久津仁愛】「そうだと思います。初めてステージに立ったときや、実際に自分のことを応援してくださるファンの方に会える機会が、自分の中で“ちゃんと自覚を持たないと”とか、“しっかりしないと!”って思った瞬間だと思います。初めて仕事をしたときに、特に芝居に関しては正解がない世界だし、きちんと自分で考えていかないと何もできないんだなっていうことなど、たくさんのことに気づけた。今もまだまだ技術も実力もないというのは自分の中で自覚しているので、もがきながらも楽しみながらこの仕事をやれているのかなって思います」
――様々なお仕事を通して、今感じている“役者という仕事の楽しさ・魅力”とは?
【阿久津仁愛】「普通に生きていたらわからない、経験できないことを、役を通して知ることができたり、自分のやりたいことにも挑戦することができる、魅力だらけの仕事だなって思います。僕は今、事務所のグループ(キューブに所属する若手俳優のサポーターズクラブ「C.I.A.」)があるので、舞台や映像などの芝居の仕事以外でも、たとえば歌やダンスなど、やりたいことがあったらチャレンジできる環境があって、それがすごく魅力的だなって感じています。それと、日常生活からいろんな人の動きやしゃべり方を観察して、それを芝居に還元できることも面白い。普通に過ごしていたら、見えないような視点から自分のことをみることができるようになったり、俯瞰してみたり、そういうこともこの仕事をやり始めてからできるようになったんです。怒っている時も、“自分ってこういう風に怒るんだ”って、客観的に自分を見て気づけたりする瞬間がある。悩むことや難しいなと感じることはたくさんありますが、楽しい仕事だなって思います」
■「できないことがあるって、めっちゃ楽しいなって思う」
――難しいなと感じたり、壁にぶつかったりしたとき、どんな風に乗り越えていますか? 自分なりの対処法があれば教えてください。
【阿久津仁愛】「一番は寝ることだと思います! あと、できないことはとにかく練習する。芝居に関しては練習したらできるようになるかっていったら、そうでもないので難しいですが、歌やダンスなども自分の中でできていないと感じたら、鏡を見て自分の動きを確認したり、声を聞いて練習するようにしています。その練習も“特訓”ではなくて、“こうやったらうまく聴こえるんだ”、“こうやったらカッコ良く見えるんだな”と、自分の中で楽しみながらやるようにしていて。なので、できないことがあるって、めっちゃ楽しいなって思うんです。できないことで悩むことはあまりない。できなかったら、ひたすらできるようになりたいって思います」
――“なんでできないんだろう”と凹んだりするのではなく、“できない=その分、伸びしろがある”みたいな感じで、プラスに捉えられるんですね。
【阿久津仁愛】「はい!! 最初はできないことに対して落ち込んでいましたが、それだと何もかもが下がっていく一方だったので、できないなら練習するしかない。練習してもできないのであれば、できないなりの最大限を出せるように工夫しようって考えてやっています。いつもと違うやり方でやってみたり、自分の中でいろんな方法を試して、その中でのベストを尽くす。力が入り過ぎちゃうと何もできなくなってしまうので、冷静な自分を頭のどこかに置いておいて、自分を客観的に見ながらやるようにしています」
――これまでもたくさんオーディションを受けてこられていると思いますが、オーディションの際、常に心掛けていることは?
【阿久津仁愛】「一番は楽しむことだと思います。緊張したり、ガチガチにならないよう、ラフな感じで臨むようにしてます。力が抜けた状態のほうが、本来の自分を出せるし、楽しくやれると思うので。あと、舞台のオーディションって、けっこう人数が多かったり、時間もかかることがあったりするので、集中力が途切れないように、常に何かを考えたり周りを見たりすることを大切にしています」
――芸能界デビューを夢見ている読者に向けて、阿久津さんが夢を叶えるために大切だと思うことを教えてください。
【阿久津仁愛】「僕自身、芸能界に対しての憧れや興味はあったものの、具体的な夢や目標がない状態でこの世界に入って。お仕事させていただくようになってから、“楽しい!”ということに気づけたので、何か行動に移してみたら変わるんじゃないかなって思います。たとえば、学生だったら学園祭とか学校行事でステージや人前に出てみるとか。僕も中2のときの文化祭でみんなの前で歌ったのですが、僕の中でその経験がすごく大きくて。初めてステージに立って歌ったときに、めちゃくちゃ楽しくて“自分はこういうことがやりたいんだ!”って、はっきりと気づけたんです。なので、何か1つ自分の目標や夢に近しいことをやってみたりすることで、気づけることがあったり、考えが変わったりすることもあるんじゃないかなと。頭の中でいろいろと考えているだけでは、何もかわらないですからね。頭の中のシミュレーション通りにはいかないし、やってみないとわからないことがたくさんあると思います」
――そういう意味でも、今回の作品はワンコイン(500円)で観劇できるということで、舞台初心者や演劇に興味のある若い世代の人たちも、一歩踏み出しやすい作品になっているかと思います。最後に、作品のアピールをお願いします。
【阿久津仁愛】「500円で舞台を観劇できるという機会はなかなかないと思うので、ぜひ気軽に観に来ていただけたらなと思います。シェイクスピア作品ならではの難しいセリフや、1回聞いただけでは理解できないセリフもあるかもしれないですが、観終わったあとにそれについて考えたりするのも楽しかったりするんですよね。僕にとっても新しい自分に出会える作品だと感じていますし、稽古をしていても新しい発見が多いので、楽しみながら本番に臨みたいなと思っています。まだまだこれから自分の中でブラッシュアップしていかないといけないので、本番、どうなるのかわからないし、ドキドキですが、きっと面白いものになると思います!」
【公演概要】
野外劇 ロミオとジュリエット イン プレイハウス
10月15日(金)〜17日(日)東京芸術劇場プレイハウス
劇場を「ひらく」アクションとして、ワンコインで観劇することが出来る高品質な演劇、をコンセプトとして上演してきた東京芸術祭の野外劇。4年目となる今年は、シェイクスピア作・松岡和子訳の「ロミオとジュリエット」を上演。
演出は昨今様々な話題作を手掛け、バラエティに富んだ作風に定評のある青木豪を迎え、総応募者945名のフルキャストオーディションで選ばれた14名が出演。
今回の「ロミオとジュリエット」のコンセプトは、「女系一家・モンタギューvs 男系一家・キャピュレット」。ロミオを筆頭にモンタギュー家の配役を女性が、ジュリエット以下キャピュレット家の配役を男性が、それぞれ演じる。
当初はGLOBAL RING THEATRE(池袋西口公園野外劇場)での上演を予定していたが、本年度は野外劇本来の趣旨が新型コロナウイルス感染拡大につながる恐れがあるため、東京芸術劇場プレイハウスに会場を移しての上演となる。
■阿久津仁愛 プロフィール
(あくつ・にちか)●2000年12月23日生まれ、栃木県出身。キューブ所属。『第27回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』準グランプリ。2016年、ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 越前リョーマ役に抜擢され、舞台デビューを果たす。その後、ドラマ『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)、『マイルノビッチ』(Huluオリジナル)、音楽劇『プラネタリウムのふたご』主演、映画『ツナガレラジオ〜僕らの雨降Days〜』、舞台「鬼滅の刃」其ノ弍 絆 累役、LINELIVEショートドラマ企画「怪奇物件探偵X」などに出演。