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2019/02/28 08:01
今年注目の新人女優・東野絢香を育んだトライストーン・アクティングラボ「私の全てが変わった、愛のある場所です」
小栗旬や田中圭、綾野剛、坂口健太郎、木村文乃らが所属するトライストーン・エンタテイメント直営の俳優養成/演技研究所「トライストーン・アクティングラボ」(TSAL)。そのTSALで学び、エランドール賞授賞式にて「アクターズセミナー賞」を受賞。5月14日からの劇団「イキウメ」公演『獣の柱』やテレビCMに出演するなど、注目度が高まりつつある新人女優・東野絢香さんにインタビュー。女優をめざしたきっかけから、TSALで成長したこと、今後の目標について聞いた。
■東野絢香インタビュー
――先日は錚々たる俳優・女優が顔を揃える第43回エランドール賞授賞式で、映画産業振興機構主催のアクターズセミナーからアクターズセミナー賞を受賞しましたね。
「人生で初めて表彰式でトロフィーをいただきました。スポーツもやってこなかったし、学校生活でもそんなことなかったので、すごく嬉しかったです。エランドール賞授賞式の、裏方のお手伝いが出来たのも勉強になりました。いつかエランドール賞新人女優賞に選ばれるように頑張ろうって、モチベーションも高まりました」
――「アクターズセミナー」は、各プロダクションのエントリーから選抜された若手俳優が、テレビ局や映画会社のプロデューサーに芝居を見せることが出来る機会ですが、参加してみていかがでしたか?
「周りは初めましての人ばかりのなかで、チームでの演技や、2分30秒の自由演技を披露するんですが、参加者の皆さんの個性を目の当たりにして、勉強になったなぁというのが一番大きかったです。自由演技の順番が最後から2番目だったので、50数名の演技を先に観ることができたんですが、何人か似たような芝居があるのかなって思っていたら、見事にみなさん個性がバラバラで。でもその点、自分らしくやろうと思えたので、やり易く感じました」
――自由演技は、内容も見せ方も自分で考えて演じていいんですね。東野さんはどんな演技を披露したんですか?
「ちょっと奇抜で攻めた題材を1か月前ぐらいから準備しました。普段からお芝居を考えるのが好きで、TSALのレッスンのなかにも即興があるので、家でもずっと一人で即興をしてます。人間の暗部を見つめたものが多いかも知れないです。その人たちなりの『道理』だとか、社会から外れてるものに目を向けがちですね。普段から考えていることが、芝居に活かせて、評価されたのが嬉しかったです」
――他の俳優の芝居を観られたことも刺激になったのではないですか?
「セミナーでプロデューサーの方が“暗い題材を持ってくる人が多いのは、時代なのかな”とおっしゃっていて、私も暗い題材を持って行ってしまったなと。そんななかでも、明るくコメディタッチで、笑わせてくれるような演技をしていた方は印象に残りましたし、改めて人を楽しませたり幸せにする大切さも知って、気付く事も多かったです。やっぱり幸せっていいものだよなって思えたり、ちょっとしたことに喜びを感じられたりして」
――先日、劇団イキウメのカタルシツ演芸会『CO.JP』で、コントに出演しているのも見せていただきました。東野さんが醸し出す違和感がアクセントになっていて、とても面白く拝見しました。
「人生初めてのコントでした。人を楽しませたり、笑わせたり、幸せにすることって偉大だなって思って、勉強になりました。特にお客さんとの一体感がすごくて、お客さんの反応によって役者の雰囲気が変わるので、お客さんと創り上げているような空気がして。毎回どんな感じになるのか予想がつかなくて、毎回初日みたいな感じで、出る前は緊張しました」
――東野さんは黙っていたらクールで怖そうな、モード系のモデルのような雰囲気があって、そんなキャラクターも活かされていたと思います。
「カメラマン、看護師、中学生と、どれも初めての役で戸惑いはあったんですが、“それはダメ”“これはやめてほしい”とか制止されたりするより、“こういうことをしたら面白いんじゃないかな?”っていうのをみんなで考える、明るくて、意欲が湧く楽しい現場でした。今後自分が何かを発信していく立場になったときに、こんな現場を創れるようになりたいと思いました」
――イキウメの本公演のオーディションを受けたことがきっかけで、この『CO.JP』に出演することになったそうで。
「私は無名なので、本公演に出る前に、ちょっとでもお客さんに知ってもらって“あのコントに出ていた子だ”って言ってもらえるようにと、作・演出の前川知大さんやスタッフの方にお気遣いいただき、ありがたかったです」
■「みんな“役者になる”という同じ方向を向いているので、友達が増えました」
――役者を目指したきっかけは?
「一人っ子で兄弟もいませんでしたし、友達もそんなに多くなかったので、小さい頃から、学校にいない時間はずーっとテレビを観ているような子でした。一人で映画や演劇を観に行くようになって、気づいたころには役者をやるって思ってました」
――その後、大阪から上京してTSALに通うようになったのはどうして?
「15歳ぐらいのときに、自分で応募して大阪の事務所に所属した後、演技を学びながら高校の卒業資格が取れる専修学校に通うためにそこは辞めて。卒業の頃には東京でやってみたいという気持ちだったので、トライストーンの方が学校にオーディションに来てくださったのをきっかけに、上京することを決めました」
――18歳で大きく環境を変えるのは、勇気が必要だったのではないですか?
「TSALには地方から上京して来ている方も多かったので、ホームシックになることもありませんでした。年齢や性別が違っても、みんな“役者になる”という同じ方向を向いているので、友達が増えました。大阪にいた時より全然多いです(笑)。いろんな人生を歩んで来た人が集まって、個性もバラバラなので、ちょっとズレている人がいたとしても、はみ出してしまうこともなく、みんなで受け入れて、互いに意見を言い合えるので、ありがたい仲間だなって思っています」
――TSALで学んで3年目になりますが、ここはどんな場所ですか?
「一番の魅力は『人』だと思っています。自分は今まで“世の中の9割のものが嫌い”っていう感じで、閉鎖的に生きてたんです。でも、ここでは分け隔てなく接してくれ、心の壁を取り払ってくれたんです。周りの人も私もお互いを肯定できるようになりました。自分自身入ったばかりのときと今とじゃ全然、性格も変わったし、顔つきも変わったし、全部変わったなって思います。愛であふれている場所です」
――そういう変化は芝居にも影響しそうですね。
「これまでは好きなものしかできなかったですけど、今はホントに嫌いなものがないし、嫌いな人がいないというか、まず否定から入らなくなったのが、自分のなかで進歩、成長かなって思います」
――TSALでは在籍中に様々なオーディションや現場の経験もできますが、そうしたなかで発見したことはありますか?
「舞台の現場では座組によって全然空気感が違うので、芝居以外の部分でも、自分の役割や、自分の居方、自分の姿勢を気にするようになっています」
――自分のことを知ったり、見つめ直したりすることも増えた?
「自分のことが好きじゃなかったときは、自信がないから人に話しかけたりもできませんでした。姿勢もどんどん屈んでいって、存在感を消そうとしたり、逆に睨みを利かせたり。でもだんだん人を愛せるようになって、自分を愛せるようになっていくと、“この人どういう人だろう?”って知りたい気持ちが芽生えたり、オーディションに行っても“この人たちのいいところを見つけて帰ろう”という心持ちに変わって言って。そうすると、だんだんオーディションの通過率が上がりました」
――自分を認めることが出来ると、コンプレックスも役者としての武器になりますよね。
「TSALに入って気づいたのはそこでした。“私ってそんなに可愛くないんだ”って(笑)。どこかで“ちょっとは行けるんじゃないか”って思ってたかもしれないんですが、ここでいろんな人を見る=現実を知りまして。でもこれまでは“ブス”って言われても傷つくだけだったんですけど、今は逆にそれを武器にできると思うようになりました。昔の自分より、今の自分のほうが好きですし、トータルでは今のほうが輝いてるんじゃないかって思うので。TSALに入って、自分の身の丈を知って、逆に自分の立ち位置を知ることができました」
■「明るさも寂しさも、幸せも不幸せも伝えていける役者になりたい」
――TSALのレッスンで、自分の糧になった部分は?
「演技の細かい技術面はもちろんあるんですが、まず一番は人間性ですね。講師の方から“芝居は人間性が出る”とか、“オーディションのときになぜ自己PRで困るかと言うと、普段から自分のことを考えていないからだし、自分に自信のある生き方をしてないからだ”って教えていただいて、徹底的に自分を見つめ直すようになりました。普段からどう人と接するのか自分の言動に責任を持つようになりました」
――今後の目標や夢について教えていただけますか。
「もともと映画が大好きなので、映画に出たいです。是枝(裕和)さん、李(相日)さん、二宮健さん、松居大吾さん…そして岩井俊二さん! すごくいっぱい出てくるんですが、大好きな監督の映画に出ることができたら幸せですね。明るさも寂しさも、幸せも不幸せも伝えていける役者になりたいと思っています」
――常に芝居漬けの生活だと思うんですが、演技とは別に、個人的な趣味はありますか?
「演技と全く関係ない趣味だと、麻雀が好きです。普通に雀荘に友達4人で行ったりしますよ(笑)。麻雀って複雑で、いろんな美学が隠れているなと思うんです。すっごいやらしいヤツとか、すっごい綺麗にそろえる人とか、大博打を狙う人とか…人間性が手牌に出て、人を知ることができるので、すごく興味深いです」
――意外な一面を知れました(笑)。TSALはトライストーン・エンタテイメント直営の俳優養成/演技研究所ですが、第一線の俳優が所属する事務所の空気を感じますか?
「はじめは体育会系だと思っていたんですけど、皆さんすごく親身だと思います。トライストーン所属の方とすれ違ったときや、レッスンにお邪魔した時も、すごく気さくに話しかけてくださって。新年会に小栗旬さんが来てくださったり、エランドール賞授賞式の会場で田中圭さんとお会いして、一緒に写真を撮っていただいたときも、“お互い頑張ろうね”って声を掛けてくださいました。TSALだからと区別することも無くて、ひたすらお芝居の世界に向かってみんなで頑張って行くというアットホームな空気で、熱くて真剣な人しかいない。素敵なところだなって思いました。TSALからトライストーンの所属になった先輩の前原滉さんの活躍も刺激になっています」
――現在、TSALでは春からの受講生を募集しています。TSALに在籍している東野さんから、TSALに興味を持った人にメッセージをいただけますか?
「講師の方も受講生もすごく多彩で、個性も強い方々がいて、お芝居に対する熱意を受け取ってくださいます。役者としてどうあるべきかというのが見えてくる場所なので、悩みやコンプレックスがある人も、人と関わって、愛情をもらって人として成長できると思います」
なお現在「トライストーン・アクティングラボ(TSAL)」は2018春(5月)スタートのレッスン生を募集している(http://tristone.co.jp/tsal/)。
PROFILE
東野絢香(ひがしの・あやか)●大阪府出身。舞台劇団ガバメンツ『ハイヤーズハイ』劇団PU-PU GIRLS旗揚げ公演『女子高』、イキウメ カタルシツ演芸会『CO. JP』、CMファミリーマート「チキンベル奏者の崩壊」篇、サントリークラフトボス「新しい風 新・CEO」篇出演。イキウメ『獣の柱』([東京公演]5月14日〜6月9日:シアタートラム[大阪公演]6月15日・16日:サンケイホールブリーゼ)が控える。