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2019/01/11 18:01
座長・前山剛久「役同様にみんなに支えてもらった」と回顧、舞台『妖怪アパートの幽雅な日常』が幕開け
香月日輪原作による児童文学の名作を舞台化した、『妖怪アパートの幽雅な日常』が11日より東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて開幕。初日公演に先駆け、前日の10日には公開ゲネプロが行われ、前山剛久、小松準弥、佐伯亮、谷佳樹が囲み取材に出席した。
原作小説『妖怪アパートの幽雅な日常』は、2003年〜2013年までに本編全10巻、外伝1巻を刊行、2011年からは漫画家・深山和音によってコミック化され、現在も『月刊少年シリウス』(講談社刊)にて連載中の妖怪ファンタジー作品。2017年にはアニメ版が放送され、魅力あるキャラクターと人情味あふれるストーリー展開が時代を超えて愛され、今もなお新しいファンを増やし続けている。
物語の主人公は、三年前に両親が他界し、伯父の家に引き取られた稲葉夕士16歳。高校入学と同時に寮に入り自立するはずだったが、寮が火事で全焼してしまい、なんとか探し出した破格物件のアパート「寿荘」に住むことになる。しかし、そこは人間と共に妖怪や幽霊までが暮らすアパートだった。画家や除霊師、霊能力者、そして幽霊や妖怪など、人情味あふれる「クセ者」入居者に囲まれながら、主人公・夕士が無くしていたものを取り戻し成長していく様を描く。
主人公の高校生・夕士を演じる前山は、「魂込めて稽古に臨んできたので、ステキな作品に仕上がっていると思います」と自信たっぷりに語る。そして、座長として「いつもは引っ張らないといけないなということを意識していたけど、今回は夕士と同じように、みんなに支えてもらったなという意識が強い」と明かし、「夕士は元気にワーワー騒いでいる中で、みんなが導いてくれるという話だったので、その役の通り、みんなに導いてもらった感じです」とコメント。
夕士の親友・長谷泉貴役の小松は、自身の役について「今回は(妖怪)アパートを中心にした稲葉の成長ストーリーになっていて。僕はそのアパートには居ないんですが、稲葉の親友として見守っていて、夕士の心の変化を感じて、常にそこにいるという大切な役割を担わせていただいております」と説明。また、原作とは違う登場の仕方となっているが、「稲葉と手紙のやりとりをしていて、その手紙をもとに、稲葉の過去を一緒に見て行くという形になっています」と話し、「みんなからは僕が演じる長谷は見えないけど、僕は見えている。僕は稲葉を中心に見ていて、稲葉が誰から何を受け取ってどう感じているのかを特に意識しながら稽古をしていきました。そういうことをしっかり考えながらやっていきたい」と意気込みを語る。
「寿荘」の住人で霊媒師の龍さんを演じる佐伯は、「龍さんは、夕士くんを一番俯瞰して見て支えている役どころ。僕と似ているところが少なかったので、どう寄せていこうかが一番大変だった」と役作りでの苦悩を打ち明け、「龍さんは、夕士が今の現状に満足していないことだったり、自分の居場所がないとか、そういう悩みを全部わかっていて。こうしたほうがいいんじゃない?という選択肢をたくさん与える役どころで、そういう夕士を導くための道筋を作っていくのた大変だなと。でも、演じていくうちに、龍さんの優しさ……時には厳しい優しさだったり、信じてあげることの優しさ、見守ってあげることの優しさだったりを感じることができたので、大変だったけどすごく充実していた」と振り返った。
同じく「寿荘」の住人で詩人・一色黎明役の谷は「一色は妖怪アパートに出てくるキャラクターの中でも、一番直接的に夕士と関わっている役柄。アパートの中で、夕士の揺れ動く心情を見守るというか、親目線で夕士と関わっていく存在です」と述べ、「そこを大切にしながら、全公演お届けしたいと思います」と明かす。
さらに、2年ぶりの共演となる前山に対して、「最初のほうは若干、お互い距離があった」と告白しつつ、「久しぶりだからお互い探り合っている感じがあったけど、稽古するにつれて徐々に感覚が戻ってきて。芝居のことで"ここはこうしよう"というようなやり取りはなかったけど、お互いがやりたいことをやって、その中でいろいろと調整していくというのを日々やっていました」と回顧。そして、「みんなでご飯行ったときに、二人で『お互いちょっとずつ成長したね』ということを言いあえて。僕としては、前ちゃんは座長としても成長しているし、すごく器用になっていて、すごいなって思いました」と前山の成長を称賛。
それに対し、前山は「ありがとうございます!!」と笑顔でお礼を言い、「時間が経っていろんな作品を踏んで成長しているんだなということを感じましたし、最初の頃は距離があったって言ってたけど、その中でも今回はよりグッと近くなれた。それが夕士と一色の芝居にも出てるんじゃないかなと思います」と思いの丈を語った。
また、「稽古場の雰囲気はどうだったか?」と質問されると、「最高ですね!」と声を合わせていたキャスト陣。毎回稽古の際にワークショップがあったそうで、前山は「ワークショップで、絵でお題を表現するというゲームをしたり、毎日本当に楽しくやっていました。あまり気負いせずに、のびのびと自分のやりたい芝居を出していって、その中で取捨選択していくという現場でした」と稽古の日々を振り返る。
舞台版ならではの魅力については、小松が「本当に丁寧に描いていて、生身の人間がやる意味があるというか、舞台は観に来てくださった方に心から震えてもらえるんじゃないかなという魅力がある」と述べると、前山も「内容はより深く掘り下げている。話のスピード自体はそんなに早くないけど、その分、関係性やどう考えているのかというのはすごく丁寧に描かれていると思います」とコメント。さらに佐伯は「スペシャル・ダンサーの三井(聡)さんや、幽霊や妖怪が本当に出てくるので、そういうパフォーマンスも楽しんでもらえると思います」と期待を寄せた。
最後に前山は、「この作品を観たときに、一番考えるのが"普通とは何か?"ということだと思います。僕にとっての普通とみなさんにとっての普通って絶対に違うと思うし、それぞれに答えが違う。でも、そういうことを理解することが難しい。やっぱり自分が一番だし、相手のことでわからないことも多いけど、そこの境界線を踏み越えていく勇気をもらえる作品です。ぜひ"普通とは何か?"、この作品を観て、考えていただけたら嬉しいです」と呼びかけた。