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2019/01/06 08:01
『まんぷく』の塩軍団・前原滉、大河『いだてん』出演 新進俳優の出演作が尽きぬ理由「一言のセリフでも次につながると信じてやっています」
NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(1月6日スタート)に主人公の同級生・平田役で出演する前原滉。昨年末は朝ドラ『まんぷく』の“塩軍団”の癒し系、丸メガネとタンクトップがトレードマークの小松原完二を好演して大きな話題となった新進の演技派俳優だ。小栗旬や綾野剛らが所属するトライストーン・エンタテイメント直営の俳優養成/演技研究所「トライストーン・アクティングラボ」(TSAL)で学んだ後、トライストーン・エンタテイメントの所属になって3年半、出演作を着実に積み重ねているだけでなく、作品の中で存在感も残している彼は今、役者として次のステップに進み始めている。
■前原滉インタビュー
――昨年後半は、連続テレビ小説『まんぷく』での活躍が大きな反響を呼びましたね。
「僕たち“塩軍団”としても、こんなに話題にしていただけるなんてびっくりしてます。撮影自体は夏から秋にかけてやっていて、全部撮り終えてからのオンエアだったので。ただNHKのスタッフさんたちが塩軍団をとても愛してくれてるのは、現場にいた頃から感じてたんですよ。僕らが入るときに『塩軍団、入りまーす』って声をかけてくれたり、それこそ15人それぞれの紹介動画を公式Twitterで流してくれたり。『まんぷく』のキャストの中ではほんのサブの存在なのに、そこまでしてくれる作品ってなかなかないと思いますよ。視聴者の皆さんが塩軍団に注目してくれたのも、スタッフのみなさんの愛のおかげというところは大きかったと思いますね」
――スタッフさんの愛もさることながら、15人それぞれキャラが立ってましたよね。前原さんが演じた小松原完二に関しては、やっぱり「タカちゃんラバーズ」ということで。結果は残念でしたけど。
「いや、でも冷静に考えれば、タカちゃんが選ぶのは神部さんだって誰が見てもわかりますよね(笑)。増田くん? 堀くん? いや、小松原くんもアリじゃない?、という声がTwitterとかで上がってることに逆にびっくりしました」
――それは、なんだか応援したくなる存在だったからですよ。
「ありがたいことですよね。本当に役に恵まれたと思うし、でもやっぱり塩軍団に関してはチームプレイの勝利だったと思いますね。塩軍団って、もちろん個々のキャラや役割はあったんですが、基本的には15人による“集団の芸”だったと思うんです。普通、むさ苦しい男が15人もいたらキャラが渋滞してしまうものなんですよ。だけどその渋滞をうまく回避しつつそれぞれのキャラがちゃんと出ていたのは、お互いがお互いのキャラを理解していたからだと思うんです。塩軍団の登場シーンって、台本にもあまり細かく情報が書かれていなかったんですね。誰がどのセリフを言うとか、どんなリアクションをするとか。だけど、たとえば“こいつはたぶん最初に声を上げるタイプだな”とかお互いの中で共有されてたものがあったから、声がかぶったりとか、逆に止まったりとかもほとんどなかったんです。その中でそれぞれ、遊びを入れたりもしてましたしね」
――チームプレイとは言え、やはり自分の色を出すことも意識してたんですか?
「それは全員が全員あったと思います。口には出さなかったですけど、この中で埋もれないぞとか、やってやるぞという空気感は確実にあって、そんなふうに役者同士で牽制し合ってるヒリヒリ感がすごく刺激的でしたね。だから、タカちゃんを追いかけているときは純粋に楽しかったです(笑)。そういう牽制とか抜きに、自分の芝居に集中できた場面だったので」
――タカちゃんに会えるからと、小松原が蝶ネクタイでおしゃれしてたところなんか、すごくほのぼのしちゃいました(笑)。
「蝶ネクタイはともかく(笑)、塩軍団の衣装合わせってすごく特殊で。普通は一人ひとりの衣装が用意してあるんですけど、塩軍団に関しては机の上にばーっとフリーマーケットみたいに服が積まれてて、“好きなのをどうぞ”という感じだったんです。ようは、各自が衣装合わせまでに台本を読み込んできて、その上で自分のキャラに合う衣装を選んでるんですね。そういうところも含めて、各自がすごく自分のキャラを考えて愛着を持ってやっていたと思います」
――塩づくりシーンのふんどし姿もなかなか精悍でした!
「人生初ふんどしでした(笑)。ふんどし風パンツとかじゃなくて本当に布を巻いて締めるやつで、最初に締め方をレクチャーしてもらったんですけど、後半にはみんなスムーズに締められるようになってましたね。普通のパンツより楽だって言ってるメンバーもいたけど、個人的にはあのキュッと感には最後まで慣れなかったです(苦笑)。だけど真夏のロケで、しかも海のシーンが多かったので軽装で助かったところもありましたね。一応、日焼け止めは塗ってたんですけど、汗ダラダラで意味なかったです。みんな全身真っ赤で、ロケは10月までだったんですけど、僕もいまだに肩にランニング焼けが残ってます」
――役者同士の関係性だけでなく、体もヒリヒリしていたわけですね(笑)。
「ただ役者同士のヒリヒリはあっても、ピリピリはぜんぜんしてなかったです。特に僕はあの中でも年下のほうだったので、すごく甘やかしてもらってました。ほぼ毎日のようにみんなでご飯を食べていたんですけど、全員でいるときの空気作りってやっぱり年長の人たちがしてくれるんですよね。本当にいい人たちばかりで、テンションが下がっているときには話しかけたり、今は話しかけるときじゃないなと感じたら放っておいてくれたり、そういうことを自然にしてくれるお兄さんたちで。同じ“タカちゃんラバーズ”の子とは、東京に帰ってきてからも一緒に銭湯に行ったりするような付き合いが続いているし、今振り返ってもいい仲間と出会えた作品だったなと思いますね」
■「一言のセリフでも次につながると信じてやっています」
――では、改めて2018年を振り返って。1月クールのドラマ『隣の家族は青く見える』で初のドラマレギュラーに始まり、朝ドラ『まんぷく』の役が話題となり。とても充実した1年だったんじゃないですか?
「そうですね。その間にも映画の撮影があったり、1話だけ出演させてもらった連ドラがいくつかあったり。ドラマ『獣になれない私たち』は第5話の3、4シーンだけの出演だったんですけど、幸運なことにオンエア日が『まんぷく』の塩軍団登場と同じ日だったんですよ。それで覚えてくださった視聴者の方もけっこういたみたいです。同じように現場にも見てくれている人は必ずいるんですよね。だから無駄にしてはいけないし、一言のセリフでも次につながると信じてやっています。ただ今は、そんなことは当たり前なんだと痛感しています。ようは監督や現場にいる人を納得させるとか、いい芝居をやるのは役者としての大前提の土台であって、その先に行くには視聴者やお客さんを惹きつけられること。“この役者が出てるからこの作品を見たい”と思ってもらって、作品に貢献できる役者を目指さないといけないんだと思い知らされました」
――そう思うには、なにかきっかけがあったんですか?
「大きかったのは、映画『栞』の舞台挨拶に登壇させてもらったことです。平日の夜にも関わらずあんなに多くのお客さんが、しかもお金を払ってきてくれてるってすごいことだなと。もちろん僕を見たくてわざわざ来てくれた人はほとんどいなかったと思いますが、だからこそ、そう思わせられるだけの役者にならないといけないんだと、舞台から客席の光景を見ながら思ってました」
――1年前のデビューのインタビューで『映画の舞台挨拶に登壇するのが目標』だとおっしゃっていましたが、そこでさらに高い目標が見つかったわけですね。
「なんだか2018年は、大きな転機の年だった気がします。なぜ自分はこの仕事を頑張ってるのかとか、原点的なことも考えたりとかして。それこそ僕もいい年だし、もし結婚したら守らなきゃいけない人もできるわけで、そのためにこの仕事をしているのか? とか──。でも誰のせいでもなく、勝手に自分で自分を縛ってただけなんですよね。ひとしきりモヤモヤして、そこから抜け出してからは芝居がもっと楽しくなったし、人にも優しくなった気がします(笑)。前はあんまり自分のことをしゃべらないほうだったんですけど、そんな垣根も全部倒れて、辛かったときのこととかも笑って話せたり、それこそ悩んでる子に対して“なんとかなるよ”って言ってあげたくなったり」
――役者志望の中には、悩んでる人も多いと思います。前原さんもTSAL時代はその1人だったわけですよね。
「いや、その意味では今もそんな変わらないです。事務所に所属して3年半経ちましたが、相変わらずバイトもしてますし、オーディションも受けまくってますし、役者としての僕のポジションはTSAL生と横並びだと思うんです。じゃあどうしたら飛び抜けることができるかと言えば、やっぱりさっき言った視聴者やお客さんに選ばれる役者になるしかないんですよね。でもそれは誰にでもチャンスがあることで、それこそ『まんぷく』の塩軍団みたいなサブのサブの役どころが話題になることもあるわけですから。TSALにもいっぱいオーディションは来ますし、そこのスタートラインに立つことは誰にでもできると思うんです。なので、うーん、僕にはまだTSAL現役受講生の人や役者志望の方たちに参考になるようなことを言える余裕はないですね(笑)」
――今年はNHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』の第1話から登場と、幸先いいスタート。さらにキャリアを積み重ねた先に、実感を込めてメッセージを伝えられることもあるかもしれないですね。
「そうですね。役者としてちゃんと年齢を重ねて、意味のあるいいことを言えるようになりたいです。『いだてん』は初期の登場なので、去年にほとんど撮影が終わってるんです。なので、ようやく髪も伸ばせます。『まんぷく』『いだてん』と続いて、なかなか現代に戻ってこれなかったので(笑)」
――昭和な感じがかなりハマってますけどね(笑)。
「言われます。一応、これでも26歳の若者なんですけどね(笑)。これでおしゃれな趣味とかあればいいんですけど、カフェ巡りとか。でも、どっちかというと純喫茶でぼーっとしてるほうが好きなんです。でも、僕もちゃんと現代っ子なんですよ。去年、こちらのインタビューで『2018年の目標』として舞台挨拶ともう一つ、金髪にしてみたいって言ったと思うんですけど、で、それが叶ったんです。まだ公表できないですけど、ある作品で人生初の金髪にしました」
――すごい! 舞台挨拶も叶ったし、ここで1年の目標を言えば叶うかもしれないですよ。
「ですよね。なので、今年もここで2019年の目標を言わなければと思いまして。ということで、『まんぷく』でタカちゃんに失恋してしまったので、ヒロインと恋をしてちゃんと成就する作品に出たいです。この顔の役者って、基本的に振られる役じゃないですか(笑)。それに自分でもラブストーリーを演じてる自分をイメージすると、すごく照れてしまうんですよ。だけど、それを実現させたら役者として何かを抜けられるような気がして。もちろん、まずはそういう役に選ばれなければいけないわけですが、だからこそ2019年は“恋をする”。これを目標にしたいと思います」
インタビュー・終
撮影/厚地健太郎 取材・文/児玉澄子
■前原滉プロフィール
まえはら・こう●1992年11月20日生まれ、宮城県出身。トライストーン・アクティングラボ(TSAL)』でのレッスンを経て、トライストーン・エンタテイメント所属の俳優となる。大河ドラマ『おんな城主直虎』(NHK)『陸王』(TBS)などのドラマや、各映画賞で高い評価を受けた『あゝ荒野』(前篇)をはじめ『3月のライオン』『トリガール』『探偵はBarにいる3』などの映画に出演。2018年は、ドラマ『隣の家族は青く見える』(CX)連続テレビ小説『まんぷく』(NHK)にレギュラー出演したほか、『絶対零度 〜未然犯罪潜入捜査〜』(CX)、『正義のセ』『獣になれない私たち』『部活、好きじゃなきゃダメですか?』(以上NTV)など数々のドラマに出演、映画『世界でいちばん長い写真』『母さんがどんなに僕を嫌いでも』『栞』『銀魂2 掟は破るためにこそある』が公開された。2019年はNHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(1月6日スタート)にレギュラー出演する。
■トライストーン・アクティングラボ レッスン生募集
小栗旬や田中圭、綾野剛、木村文乃、坂口健太郎といった、人気・実力を兼ね備えた俳優が所属する芸能プロダクション、トライストーン・エンタテイメント直営の俳優養成/演技研究所。演技の未経験者から、演技術の向上を目指すプロの俳優まで、幅広く門戸を開いている。講師陣は多数の俳優を指導してきたエキスパートぞろい。また、映画や舞台の製作者、監督、演出家、俳優などによる特別講義も実施している。映画『クローズZERO』シリーズや『ルパン三世』そして『新宿スワン』といった大型映画を自社製作しているのもトライストーン・エンタテイメントの特色。インタビューで語られているようにTSAL生にもこれらの作品への出演の機会を提供している。もちろん、外部の映画、ドラマ、舞台のオーディションへも積極的に送り込んでおり、TSAL在籍中から俳優として活動する人は多い。レッスンで有望と認められたり、人一倍の努力が評価された場合には、トライストーン・エンタテイメント所属に向けて推薦が受けられる。今回の前原滉もTSAL入所〜レッスンを経てトライストーン・エンタテイメントに所属をした一人である。
トライストーン・アクティング・ラボ(03-5433-2195/WEB:http://www.tristone.co.jp/tsal/)