舞台『幸福な職場〜ここにはしあわせがつまっている〜』が26日、世田谷パブリックシアターにて開幕。初日公演に先駆けて公開ゲネプロが開催され、安西慎太郎、松田凌、前島亜美（SUPER☆GiRLS）らキャスト陣が初日挨拶を行った。

　放送作家としても活躍する「きたむらけんじ」の代表作として、2009年の初演以来上演を重ねている本作。昭和34年、蒲田にあるチョーク工場が、初めて知的障がいを持った少女を雇用したときの実話をもとにした、誰もが当てはまる「お仕事」の物語。

　父親が倒れたため、急遽、会社を継ぐことになった主人公・大森泰弘（安西）。慣れない経営に四苦八苦する毎日を送るなか、大森のもとに、養護学校の教師・佐々木友枝（馬渕英里何）が「来年卒業する生徒を雇ってもらえませんか？」と訪ねてくることで、物語が大きく動き出す。

　一旦は断った大森だったが、「職業体験」として期間限定で受け入れることを渋々と承諾し、知的障がいを持つ少女・吉岡聡美（前島）が工場にやってくる。熱心に聡美を指導をする従業員・久我省一（谷口賢志）に対して、「うちの会社にはそんな余裕ないはずだ」と聡美の受け入れに反発する従業員・原田亮輔（松田）。障がい持った聡美が人生で初めて「働く喜び」を知り、さまざまな事情を抱えた従業員たちに、仕事への向き合い方を考えるきっかけをもたらしていく。

　前島が演じる聡美のまっすぐで純粋な言動に、思わず笑みがこぼれたり、心に刺さるものがあったり、涙したり、心を揺り動かされる。様々な事情を抱え悪戦苦闘する人たちと一人の少女による深い人間ドラマの中に、思わず笑ってしまうようなコミカルな掛け合いもあり、見るものを飽きさせない。“何のために働くのか？”“幸せとは何か？”という、普段忘れがちなことを気づかせてくれる。まさに、サブタイトルにもあるように、“ここにはしあわせつまっている”と感じさせられた舞台だった。

【初日挨拶コメント】
≪主人公の大森泰弘役・安西慎太郎≫
「さきほど、（作・演出の）きたむらさんと『仕事場というのは、不安とかいろいろなものを溜め込む場所だけど、この作品を観て、明日頑張る材料を探し出してくれたらいいね』と話をしていて。本当にそういう作品に仕上がったと思います。
僕が演じる大森は、知的障がいの方の雇用に関して最初は否定しているんですが、経営していく上で、知的障がいの方たちを雇用することが、自分たちの会社にとって一番いいことだっていうことを決められる男。懐が深く魅力的な役なので、ぜひ注目してもらえたら」

≪工場の従業員、原田亮輔役・松田凌≫
「知的障がい者の雇用に対して反発する役どころですが、そういった気持ちって、誰しも瞬間瞬間に思ってしまうところがあると思うので、共感してもらいつつ、原田亮輔という人間が少しずつ成長していく姿を見てもらえたら。タイトル通り、作品の中には“幸せの意味”がたくさん出てきます。観ていただいた方それぞれが、明日に繋がる何かを持って帰ってもらえたら嬉しい」

≪知的障がいを抱える少女、吉岡聡美役・前島亜美（SUPER☆GiRLS）≫
「中度の知的障がいと自閉症を併せ持つ少女の役です。私にとっても初めての経験なので、知的障がいを抱えていきる人生ってどういうものなのか、いろいろ考えて稽古に励んできました。その中で、知的障がいを抱えていても一人の人間の人生であるということには変わりない。夢もあるし、恋もするし、働く幸せを求めて『この職場で働かせてください』と、たくさんの人に声をあげてメッセージを届けていきたいと思います」

≪工場の従業員、久我省一役・谷口賢志≫
「この作品は実際に起きた出来事をものにしている舞台です。みんなでそのことを大切にしながら、舞台を作ってきました。この6人での稽古が本当に楽しくて、素敵な舞台になっていると思います。みなさんの現実とつながって、次に進む一歩になってくれれば嬉しいです」

≪養護学校の教師、佐々木友枝役・馬渕英里何≫
「とても有意義な稽古を経て、ようやく舞台で芝居を通すことになります。ゲネプロは関係者の方ばかりなので、なるだけリラックスして楽しんで、ご自身が感じたものをそのままたくさんの方に伝えてもらえたらいいなと思います」

≪近所の住職、谷口欣太郎役・中嶋しゅう≫
「見ての通り住職です。とても楽しいキャストと巡り会えて、その楽しさお客さんにも伝わって、そしてお客さんにも楽しんでもらえたらいいなと思います。何でもいいので、観てくれた方が、元気で帰ってもらえたら嬉しいです」

　舞台『幸福な職場〜ここにはしあわせがつまっている〜』は、1月29日（日）まで世田谷パブリックシアターにて上演。