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2018/02/14 20:01
北原里英、主演映画『サニー/32』を語る「『白石和彌監督が作るアイドル映画』として今観るべき作品」
4月にNGT48からの卒業を控える北原里英の主演映画『サニー/32』が、2月17日に全国公開される。熱望していた白石和彌監督作品への出演が叶い、極限の状況・シチュエーションに全身全霊でぶつかった「2018年もっともヤバい映画」。映画、女優への想い、そして卒業のその先について北原が語った。
■北原里英インタビュー
ーー作品を拝見して“きたりえ、攻めてるな”って思いました! 白石和彌監督作品への出演を熱望されていたということですが、白石作品との出会いについて教えてください。
「白石監督が撮られた作品とは知らずに『凶悪』(2013年)を観た後に、秋元(康)先生に“すごく面白かったです。『凶悪』のような映画に出たいんですよね”という話をさせていただきました。元々“重め”“暗め”“エンタメ”の3大“メ”映画がすごく好みで、園子温監督の作品も好きだったので、『凶悪』にも惹かれるものがありました。ピエール瀧さんとリリー・フランキーさんのお二人が本当に怖くて、トラウマになりそうなシーンがたくさんあるのですが、それだけでないところがすごく面白くて。その後に『日本で一番悪い奴ら』や『牝猫たち』など、白石監督の作品を観て、全部面白いなって思いました」
ーー特に魅力を感じる部分はどこですか?
「トラウマになるような残酷なシーンがあるなかに、ちょっと面白みを入れてくるところのバランスが素晴らしいなと。『サニー/32』だったら、瀧さんもリリーさんも超が付くほど悪い奴なのですが、赤理の誕生日のシーンでは、二人の怖いだけでない一面を巧みに入れていらっしゃっているのはさすがだな、と感じました。『日本で一番悪い奴ら』でも、綾野剛さんが中村獅童さんの元へ乗り込むときのお芝居がコミカルだったり。暗すぎず、重すぎず、エンタメ要素をしっかりと入れ込んでくることで、二時間全く飽きることがなかったです」
ーー企画が決まってから2年ほど時間が空いていますが、北原さん自身、NGT48に移籍し、総選挙で選抜に復活し、そして卒業を発表するという激動の2年間でした。その間、どんなことを考えながらこの映画を待っていたんですか?
「主演映画を撮ることがサプライズ発表されたときは、とても嬉しかったです。いつでもスタートしていいように心構えをしていました。NGT48への移籍もあり、多くの経験とかけがえのない仲間に出会うことができましたし、この映画を通して、さらに新潟が大好きになりました。私のこの2年間の大きな決断は、間違いではなかったと思います」
ーーその2年間の経験が、芝居のうえでプラスになったと思うことは?
「撮影中は必死に演じていたので、そこまで深く考えられなかったのですが、改めて観させていただくと自分とリンクする部分が多いなと感じました。演じた藤井赤理は中学校教師なのですが、NGT48においては、今の私の状況もほぼ教師のようにメンバーの子たちに接することが多いですし。10歳くらい離れた子たちと一緒にやっていて、たまに言いたいことがぜんぜん伝わらないことがあったりしますし。ですので、映画の冒頭、赤理が教壇に立つシーンはすごく共感できた部分でもあります。それでもみんなのことが大好きだから、母性的な感覚で生徒を救いたいという気持ちも分かるので、今思えば重なる部分が多かったなと感じています」
ーー複雑に展開する難しい役柄ですが、台本をもらった時にイメージが出来ましたか?
「最初はイメージがしづらい部分が多く、読み合わせでも少し不安を感じた部分がありました。ですが、実際に現場に入ったら、周りの方々が、自分を映画の世界に連れていってくれたという感覚でした。撮影は駿河太郎さんとの学校のシーンから始まったのですが、そこて覚悟も固まって。撮影現場で瀧さんとリリーさんとお会いしたときは“本物だ!”と思って(笑)。やっぱり、お二人がいると映画作品としての厚みが増すんですよね。周りの方々と環境に助けていただきました」
ーー体当たりの過酷な撮影が多かったと思いますが、これはさすがにキツかったというシーンは?
「やっぱり豪雪の中を薄着で逃げるシーンは本当に大変でした。つらくて寒くて初めて泣いてしまいました。引きの画で撮影されていたため、周りにスタッフの方が誰もいない状況だったですが、 “遭難するとこんな感じなのかな…”と思ってしまうほど、孤独感と絶望感でいっぱいでした。救い出されたときには、本当にいろんな感情が混ざってしまって、向こうから白石監督が“よかったよ! 大丈夫?”と声をかけてくださったのですが、思わず、無視をしてしまいまして……。完全に我を見失いそのとき初めて絶対に無視してはいけない方を無視していました」
ーーそれも含めて白石監督流の演出ということなんでしょうか?
「本当に極限の状態になっている姿を撮りたくて、私が立ち止まってしまうまでカットをかけなかったのだと思います」
ーー雪のシーンで、なおかつ引きの絵作りだと撮影は一発勝負ですよね。
「足跡をつけられないので、一発本番でした。“ここから向こうに向かって歩いてください”と言われて、行くしかない!という決意が固まりました」
ーーさっそく“念願”の白石演出の洗礼を受けたわけで。
「瀧さんやリリーさんは、白石監督と『凶悪』で密にやられているので、お二人はずっと“あの鬼が…と愛のある言葉で表現されていました。一度、撮影中の合間にキャストの皆さんと一緒で白石監督のあだ名をつけようっていう話になりまして、『サディスティックハムスター』と、つけて盛り上がっていました(笑)」
ーー同じ監督の演出を受けた共演者同士だからこその一体感ですね。
「空き時間はすごく楽しかったです。周りに何も娯楽的なものがなかったので、しりとりをしている時間がとても楽しくて。思い返してみると、撮影は過酷でしたが、楽しかったと思える現場でした」
ーー自分と役柄の共通点についておっしゃっていましたが、赤理が監禁されて、ネットで神格化されていく展開に、『アイドル』がオーバーラップして見えます。北原さん自身のアイドルとしての活動とシンクロする部分は感じましたか?
「撮影前、白石監督と初めてお会いしたとき、“アイドル映画を撮りたい”とおっしゃっていて。実際に完成した作品を拝見して『白石監督が作るアイドル映画』になっていてすごく納得させられました」
ーーネットの生配信でのやり取りなど、アイドルについて、白石さんが捉えている核心の部分が盛り込まれているように感じました。
「確かにそうですね。しかも現代のアイドル像ではないですか? ネットやSNSを使って、広まっていく感じであったり。ネットの世界では誰でも有名になれる可能性があるところが、現代社会に沿った話だなと思います。ネットの闇の深さみたいなものも今回『サニー/32』で描いているので、本当に今観るべき映画なのではないかなと思います」
ーー見る角度によってさまざまに解釈できる、一筋縄ではいかない作品ですよね。
「いろいろな捉え方ができる映画だなと思います。観た人それぞれが違う感想を持つんだろうなと。『サニー/32』は人間の弱い部分の連続というか、蓋を開けてみたら、実は全員弱い人たちだったみたいなところがあって、私はすごく人間らしい映画だと思っています。ご覧になったそれぞれの方が作品のテーマを解釈していただけたらと思います」
ーー映画は17日に公開となりますが、卒業後の女優としてのビジョンはどう考えていますか?
「今はとにかく『サニー/32』が何かしらの形で成功できたらいいなという気持ちが大きいので、その先のことは考えていない状態ではあるのですが、今回白石監督のことが大好きになって、卒業後にまた白石監督の作品に出演したいなと思っています。もう一度白石監督の作品に出演させていただけるときには、選ばれた意味のある女優になっていたいという目標ができました。白石監督のために頑張りたいです」
ーー女優として本格始動する先輩として、芸能界を目指しているデビュー読者にメッセージをいただけますか?
「映画『サニー/32』は、自分の意志を口にしなければ出会えなかった、“言霊”から生まれた作品だと思っています。言霊は本当にあると思うので、もし何か夢があるのであれば、恐れずにどんどん口に出していくことが一番じゃないかなと思います。一歩目はとても緊張しますし、なかなか踏み出せないと思いますが勇気をもって一歩を踏み出せたら、それで大きく変わるので、勇気を持って行動することが大事だと思います。私も、昔『デビュー』を読んでいましたし、履歴書も書いていたので、読者の先輩として、このことを伝えたいなと思います」
なお北原里英インタビューの全文は、オーディション&エンタメ情報サイト「デビュー」に掲載中。下記リンク参照(https://deview.co.jp/Interview?am_interview_id=541)
北原里英
きたはら・りえ●1991年6月24日生まれ、愛知県出身。2007年『AKB48 第二回研究生(5期生)オーディション』に合格。秋元康プロデュースによるアイドルプロジェクト「AKB48」のメンバーとしてデビュー。同グループでの約7年の活動を経て、2016年より、新潟を活動の拠点とする「NGT48」チームNIIIのキャプテンを務める。女優としても多くの作品に出演しており、主な映画出演作品としては、『グラッフリーター刀牙』『ジョーカーゲーム』『任侠野郎』などがある。